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一文一投

思ったことを、だれかにひょいっと投げるきもちで

しばらくかんがえそうである。

ある夜のこと。終電間際の阪急電車に滑り込んで、やれやれと腰を下ろすなり

「きゃーーーーー!」

と威勢のいい声が聞こえた。見れば、ふくふくしたかわいらしい赤ちゃんが、電車に興奮しているのか、窓の外でも見ているのか「きゃーーーー!」「きーーー!」と小さな怪獣みたいに声を上げている。

元気やなあ!なんとなく見ていたくて、赤ちゃんの方を向いてニタニタしてたんだけれど、寄り添うお母さんの顔を見てびっくりした。

眉間にシワ。泣きそうに吊り上がった眼。「お願いだから静かにして」という気持ちが深く刻まれてた。ああ、たぶんいつもこうなんだな、この赤ちゃん。だからお母さん、こういう顔になっちゃってるんだ。

確かに電車内の空気はピリピリしてる。怪獣みたいな赤ちゃんに、いつだれが文句を言ってもおかしくない。正しくは、きっとお母さんに。静かにさせろよって。

私は、赤ちゃんにニタニタするのをやめて、お母さんを見た。

お母さん、大丈夫。赤ちゃんって騒ぐもんだもん。お母さん、大丈夫だから。泣かないで。

降車駅になって席を立った。お母さんが顔を上げたら笑いかけたい。そう念じてたけど、やっぱりダメだった。怯えたみたいに赤ちゃんを抱きしめて、ずっとうつむいてた。ひょっとしたら「うるさいんだよ」って、嫌味で側に立ったみたいに見えたのかもしれない。お母さんを見ていたのも「静かにさせて」って目線だと思ったのかもしれない。


何も言えなかった自分が悔しい。

「可愛い赤ちゃんですね!」

その一言でよかったのになあ。

電車を降りながら後悔した。半端なことはやっちゃいけないなあ。

私の行動でお母さんが救われるなんて思ってないけど、なんとなく和んでくれたらそれでいい。なんかいきなりウチの子可愛いって言われたわーって、そんなくらいで良いんだけど。

私には子供が居たことないからわからないけど。お母さんの車内の人全員に怯えたような、ずっとすみませんって思い続けちゃってるような顔が、忘れられない。私だったらああいうとき、1人だけでもいい、味方が欲しいって思っちゃうと思う。


どうなんだろ。そんなときってほっといて欲しいんだろうか。


うーむ、やっぱり子供を持ったことがないので想像出来ない。しばらく考えるテーマになりそうです。